聞き取り(音の変化)の法則

英単語は、複数組み合わさると別の音に変化することがあります。
また、単一の語でも、辞書の発音記号通りに発音されないことがあり、これらが聞き取りを困難にしています。しかし、次の①~④の法則を覚えて、自分でも発音できるようになれば、ネイティブの自然な英語の発音がよく聞き取れるようになります。
最初は難しく感じるかもしれませんが、発音は「習うより慣れろ」です。誰でもコツがつかめます。
①~④の法則をよく読み、例題で練習をしてみましょう。
音の変化の部分はカタカナで示していますが、実際の英語の音とはズレがありますので、英語の音をまねてネイティブの発音に近づけてください。
■ 注意点

◎ 音の変化はカタカナで示していますが、実際の英語の音とはズレがありますので、ネイティブの例文音声をまねて発音練習をしてください。

◎ ここで示している音の変化や省略は、北米英語の典型例であって、全てのネイティブに当てはまる法則ではありません。また、同一人物であっても、その時々で若干の不規則が生じます。

法則①
語尾の子音と語頭の母音が結びつく
an adultはゆっくり丁寧に発音すれば[ən ədʌ́lt] ですが、ナチュラルスピードの発音ではanの語尾の子音nadultの語頭の母音aが結びついて[ədʌ́lt] (「アダルト」)になります。同様に、none ofは発音記号上は[nʌ́n əv] ですが、語尾の子音neと語頭の母音oが結びついて[nʌ́v] (「ナブ」)になります。同様に、Did youは「ディジュゥ」に、like herは「ラィカァ」になります。come on inの場合は「meo」「ni」の2つが結びつくので「カモニン」になります。
【例題】
再生をクリックすると3回音声が流れます。2回目からは音声に合わせて発音してください。
再生 has a
ha
例文の再生
再生 none of
no
例文の再生
再生 did you
diジュゥ
例文の再生
法則②
同じもしくは似た子音の連続は子音が1つ省略される
get to、bank clerk、wish sheのように「同じ子音」が連続する場合や、need to、のように「似た子音」が連続する場合、ナチュラルスピードでは両方の子音を発音することが困難なので、最初の子音が省略され、get toは「ゲッゥ」に、bank clerkは「バンラーク」、wish sheは「ウィッシィ」、need toは「ニー(ッ)トゥ」になります(通常、省略した部分でごく短い間(ま)を置きます)。
【例題】
再生をクリックすると3回音声が流れます。2回目からは音声に合わせて発音してください。
再生 want to
wan最初のt省く
例文の再生
再生 got to
go最初のtを省き間を置く
例文の再生
再生 flight to
fligh最初のtを省き間を置く
例文の再生
法則③
語尾の子音は省略されることがある
and、would、shouldのdや、助動詞の否定形(don't、didn't、isn't、wouldn't)などのtは(省略してもわかるので)よく省略されます。また、get me、let me、lend meなどは、tとm、dとmの子音の連続が発音しづらいこと、t及びdを省略しても(頻繁に用いられる句であるため)get、let、lendであることがわかるので、よく省略されます(省略した部分でごく短い間を置きます)。and I、Didn't I、isn't itなどはしばしば、dやtが省略されてan I、Didn I、isn itになりますが、更に法則①で「nI」「ni」が結びつき、「アナイ」「ディドゥナイ」 「イズニット」になることもあります。
【例題】
再生をクリックすると3回音声が流れます。2回目からは音声に合わせて発音してください。
再生 lend me
lendを省略して間を置く
例文の再生
再生 let me
letを省略して間を置く
例文の再生
再生 and social
andを省略
例文の再生
法則④
くだけた発音では「タ行」と「ダ行」が「ラ行」になる
「タ・ティ・トゥ・テ・ト」や「ダ・ディ・ドゥ・デ・ド」は日常会話ではよく「ラ・リ・ル・レ・ロ」と発音されます。例えば、matterのtte()が「ラ」になって「マァ」になり、whateverのte()が「」になって「ワヴァ」に、bottomのtto()が「」になって「ボロム」になります。同様に、toトゥ)や助動詞のdoドゥ)はしばしば「」と発音されます。また、法則①により生じた音が更にこの 「ラ・リ・ル・レ・ロ」に変化することもあります。例えば、put upは法則①で 「プップ」になりますが、更に法則④で「プップ」にもなります。out ofは ①で「アウブ」になりますが、更に④で「アウブ」にもなります。「ラ・リ・ル・レ・ロ」と発音するのは、口への負担を軽くするためで、言わば怠惰な発音なのですが、特にアメリカ英語の会話では日常的に行われています。

タ/ダ → 
ティ/ディ → 
トゥ/ドゥ → 
テ/デ → 
ト/ド → 
【例題】
再生をクリックすると3回音声が流れます。2回目からは音声に合わせて発音してください。
再生 water
waタ→ラ
例文の再生
再生 to
トゥ→ル
例文の再生
再生 photos
phoト→ロ
例文の再生
法則⑤
冠詞や前置詞は弱く短く発音される
下記の語は弱く曖昧に発音されます。これらの「一音節」の語は、実質的な内容を示す語とは異なり、それ自身では重要な意味を持たず、他の語と結びついて意味 を作ったり、語と語の関係を示すもので、弱く曖昧に発音されてもコミュニケーションに支障が出ません。単語には強勢(=強く発音する音節)があり、加えて、下記の語が文中で弱く発音されるため、英語の発音には日本語にはない「波打つような強弱のリズム」が生まれます。

冠詞 (a, an, the )
前置詞 (of, at, in, on, to, forなど)
接続詞 (and, or, so, but, (名詞節を導く)thatなど)
(関係)代名詞 (I, you, he, she, they, it, who, thatなど
be動詞 (is, am, are, was, were)
助動詞 (can, will, have, has, had, do, does, didなど**

主格だけでなく、所有格、目的格も含まれます。特に、 he, his, him, her などでは h の音が発音されないことがあるので注意が必要です。

** have, has, hadは現在[過去]完了形の助動詞で、do, does, didは疑問文の助動詞です。 Yes, I do.のような代動詞や、I'll do it as soon as I can.のような動詞が省略されている場合の助動詞は(弱くではなく)普通に発音されます。